2014年9月3日水曜日

「第十七回松山俳句甲子園・旭川東高等学校参戦記①」 ~木村杏香~



六月の北海道地方大会に優勝し、今年も旭川東が十二年連続全国大会出場を決めた。それから二ヶ月、全国大会のための句づくりとディベートの練習、季語の研究などさまざまな努力をしてきた。 
 
 
俳句は五・七・五の十七音の文学。今年は記念すべき十七回大会である。旭川東からは全国大会三年連続出場の池原早衣子をリーダーに、昨年全国大会出場の渡部琴絵、木村杏香と、昨年北海道地方大会旭川東Bチームとして出場の荒井愛永、平田莉々という女子メンバーが揃った。 

旭川東は昨年、予選突破を成し遂げることができなかった。ウェルカムパーティーの場では、全国大会出場経験のある三人は昨年の映像を観るだけで悔しさが込み上げてきた。ほかの二人は意外と終始リラックスしておりその様子に助けられ、予選組み合わせの発表に動じることなくウェルカムパーティーや相手チームへの挨拶を終えた。 
 

八月二十三日、いよいよ大街道での松山俳句甲子園が始まった。予選Jブロックは旭川東チーム、全国大会初出場の慶応義塾湘南藤沢高校、地元愛媛の強豪校愛媛県立松山東高校Bだ。審査は高柳克弘先生、木暮陶句郎先生、河西志帆先生、田村七重先生、山内和子先生にしていただいた。 


第一試合は紅チームの慶応義塾湘南藤沢と白チームの旭川東。兼題は「夜店」。夜店のにぎやかさと少しの寂しさを両方表現した慶応義塾湘南藤沢に対し、旭川東は幸福の木や星図など、夜店にありそうなものを詠み込んだ句を揃えた。
 

  大木にもたれて夜店眺めたる     池原早衣子
 

先鋒戦はリーダー池原の句で始まった。大木という北海道ならではの夜店の景が見えてきそうな一句。慶応義塾湘南藤沢の田村明日香さんの的確な攻めに負けじと、こちらも冷静にディベートを進めていった。緊張の初戦は白チームに軍配があがった。

これで旭川東に勢いがついたものの、次鋒戦で留学を決意した友を見送るという、国際色豊かな校風の慶応義塾湘南藤沢の句に旗が多くあがり、慶応義塾湘南藤沢が勝利した。

いよいよ大将戦。これで勝利しなければ予選突破の可能性はぐんと下がる。ここはなんとしても勝ちたい。この試合は両句の言葉の必然性、景のブレについてのディベートが中心となった。勝利したのは旭川東。審査員の高柳克弘先生の講評では、どちらの句にもまだ改善点は残るということであった。ぎりぎりの戦いであったが、兼題「夜店」の試合は旭川東が勝利した。
 
 

第二試合は紅チームの松山東Bと白チームの慶応義塾湘南藤沢。兼題は「炎天」。戦争詠や現在進行中の新島の現象など様々な話題を詠む松山東Bに対し、炎天の熱が伝わってくるよう季語をしっかりと詠んだ慶応義塾湘南藤沢。この試合は松山東Bに軍配があがった。
 

第三試合は紅チーム旭川東、白チーム松山東B。兼題は「飛魚」。一、二年生の初心者が多い松山東Bであるが、リーダーの光藤多恵さんを筆頭に活気溢れるディベートで場は進められていった。飛魚どころか、海もない内陸部の旭川。そんなことにはめげず、飛魚の動画を観たり飛魚の特徴を調べたりなど、季語の研究をしっかりした。先鋒戦はこちらに軍配があがった。


  飛魚の跳ねて星座となりにけり     木村杏香
 

次鋒戦は夜空に高く飛び上がった飛魚の姿を詠んだ旭川東に対し、松山東Bは競りで売られる飛魚の静かな様子を詠んだ。対象的な句であるため、他の魚でもよかったのではないかというディベートになった。結果は旭川東に旗が五本上がり、ストレート勝ちで旭川東が予選突破を決めた。 

手応えのあった相手に勝ったことにより、この先どんな相手に当たっても自分達らしいディベートができるという自信がついた。旭川東、決勝トーナメント一回戦進出である。

 

決勝トーナメント一回戦は同じくJ会場。gbgyhy予選Iブロックを勝ち抜いた山口県立徳山高校との対戦であった。今年初めての開催であった山口大会で優勝し、全国大会初出場の新鋭徳山高校。兼題は「」。審査は高柳克弘先生、西村和子先生、木暮陶句郎先生、佐保光俊先生、河西志帆先生にしていただいた。 

先鋒戦は紅チーム徳山高校のスポーツ後の清々しさを詠んだ句に対し、白チーム旭川東はプラカードガールの凛とした姿を詠んだ句であった。どちらも高校生らしい青春性溢れる句同士で始まった。先鋒戦、勝利したのは旭川東だった。
 

  地図に汗落ちて見知らぬ土地にいる     平田莉々
 

次鋒戦は平田の句。言葉の必然性と説明的ではないかというディベートが主となった。初めての土地で途方にくれる作者の様子と汗を詠みこんだ、私たちにとっては自信のある一句だった。この戦いは旭川東が勝利した。また、のちに高柳克弘先生から「高校生ならではの進路に対する不安感のようなものも見えてくる一句」との評価もいただいた。
 

  朽ちかけのスコアボードや汗にじむ     荒井愛永
 

中堅戦、徳山高校の繊細な恋人同士を詠んだ句に対し、旭川東は練習熱心な野球少年を詠んだ一句。作者が本当に言いたいことを詠みきれていないのではないか、との指摘がお互いの句に出た。徳山高校の野名美咲さん、紅里さん姉妹を中心に、さまざまな視点からのディベートが繰り広げられていった。勝ったのは旭川東。この時点で旭川東の決勝トーナメント一回戦の勝利が決まった。
 

慶應義塾湘南藤沢高校と対戦したときもそうであったが、徳山高校のディベートの際に、メンバー同士がアイコンタクトをとったり、小声で話し合ったりする姿がしばし見られた。メンバーの俳句はチームの俳句。この日一日だけで、自分たちの俳句の良さをチーム一丸となって伝えようとする光景が何度も見られた。そんなディベートの姿勢をこれからの試合に活かしていこうと、二回戦進出に向け自分たちを奮い立たせた(つづく)。

 

☆木村杏香(きむら・きょうか)


 1997年生まれ。旭川東高校2年生
 俳句甲子園第16回・第17出場。
 
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿