2015年10月9日金曜日

俳句集団【itak】第21回イベント抄録①


俳句集団【itak】第21回イベント抄録①


鴨々川ノスタルジアってなあに?
 

~鴨々川ノスタルジアとBocket~

 2015年9月12日 札幌・道立文学館
 
 
 
★中島公園とすすきの周辺を舞台にしたイベント「鴨々川ノスタルジア」(通称・鴨ノス)。今年は10月2~4日に開催されました。その内容や狙いをゲスト3人(石川圭子・土肥寿郎・山田 航)に語っていただきました。
 
着物で漫ろ歩き 鴨々川ノスタルジア⇒ http://kamokamogawa-nostalgia.net/ 
 

◇鴨ノスは2014年に勃発
 
 石川 鴨々川の近くで古民家、芸者の置屋さんを改造したギャラリー、鴨々堂の女将をしています。鴨ノス、具体的には、一昨年に山田航君と友達になってから動き始めました。
 
 山田 石川さんとお話ししていて、ススキノという地域の見方が変わりました。歓楽街だと思っていたのですが、中島公園やススキノをじっくり歩いてみると、実はお寺がたくさんある。浅草みたいなところだなあと。
 
 石川 明治20年から30年の札幌の中心部の地図で鴨々川を見ると、道庁まで新川というのが伸びている。歩いて「新川」を探したという記事を、航君が道新連載の「モノローグ紀行」で書いてくれて。通常の展覧会もしつつ、そうした札幌の歴史をアートで伝える活動もしていました。そんな中、パークホテルさんが50周年ということで「地域で何か盛り上がることをやりたい」と声を掛けてくださったんです。そこでホテルの人や航君など4人で「新川」を求めて、豊平川の水門から歩いてみました。寺町など札幌ではないような空間になっていて。何処の地域に来たんだろうみたいな感じを受けて・・・。こうした札幌の歴史を探って紹介するイベントをやってみては・・・となったんです。
 
◇Bocket(ボケット)誕生

 山田 「Bocket」はイベント「鴨ノス」の公式ムックという位置付けの雑誌で、僕が責任編集をしています。寿郎社を巻き込んで、出版することになりました。

 土井 巻き込まれた土井です。寿郎社という出版社をしています。
 
◇イベント紹介

 石川 イベントは、札幌の歴史を探り、紹介するという骨格に肉付けしていきました。

 ● お寺で体験講座。 これは切り絵などをしました。

 ● お寺で木魚ライブ。 音楽ライブなんですが、前列50人の人が拍手の代わりに木魚を叩きます。これは異常な盛り上がりを見せました。

 ● 札幌芸者衆の踊りを見る会。 ススキノは昭和6年に官営の遊郭ができまして。8軒の割烹があって、その外にさらに置屋がありました。今も札幌は10人ぐらいの芸者さんがいて、今も踊りや歌とか稽古してるんですが、お座敷があまり無くて、なかなかお披露目の場が無いという話を聞きました。そこでお寺で披露していただくことになりました 。

 ● お寺で怪談朗読会。 札幌の文壇で活躍している人、地域にまつわる人に怪談を書いてもらい、朗読してもらう。札幌の歴史を伝えると共に、作家さんを知ってもらう試みでもあります。

 山田 去年は乾ルカさんや立原透耶さんにも書いてもらいました。乾さんはホラーなんかも書いていて、直木賞候補にもなった方です。

 石川 立原先生は中国語の先生で、コバルト文庫にも書いている方。去年は山田航君にも書いてもらったんだけど、航君にとっての怪談って不思議だなあという感じで、航君の作品はなんかほのぼのする話でした。

 山田 書き手としてはイマイチだった(笑)。

 石川 今年は立原さんと乾さんに加えて、北大路公子さんに入ってもらいました。

 山田 北大路さんはひたすら飲む泥酔エッセーで人気ですが、もともと小説家。

 石川 去年はみんな手探りでしたが、今年は感覚をつかんで気合い入ってる。こないだゲラが上がってきて読みましたが、怖かった。鴨々堂を閉めて帰る時も困りました。 

 ● なりわい村

 石川 それから、中島公園では「なりわい村」というイベントもします。南京玉すだれ紙芝居などをします。ほったて小屋をたてるんですが、それは古材を使っていて、札幌市内で1番ゴミが少ないイベントです。命名は航君。

 山田 もともとは「昭和の仕事」という本をヒントにしています。高木護という詩人に聞き書きした本です。彼は貧乏でいろんな仕事をしていて、絶滅してしまったような仕事もしたんですね。こういうのやったら面白いんじゃないかと。

 石川 わたしは以前INAXという会社に勤めてたんですが、これからは日本経済は縮小すると思ったんです。どの会社なら安全ということもない。会社は統合されて、わけわからない会社になるなら、ここで働く必要は無いなと思ってドロップアウトしました。昔の仕事は今で言うとその日暮らしに見えますが、身の丈に合った働き方だと思います。そういう思いもあって、なりわい村というのが出てきた気がします。

◇鴨ノスとは

 石川 鴨ノスは「大人の文化祭、地域の文化祭」。やりたいということの受け皿になっていければと思っています。ボケットも本にして記録に残すことで共有する。地味だけど、文化に力を入れています。私にとっては鴨々川ノスタルジアは、学びの場。本を作るなんて1ミクロンも考えたことない人生でしたが、ボケットも作ってます。こうした活動が新たな「札幌学」というような分野を開拓して、イベントにかかわる人たちの知的好奇心も満たされていく。本年度からは札幌市観光局もかかわります。札幌シティガイドで検定とった人にガイドしてもらうツアーをやります。これは鴨ノスの2~4日だけではなくて、9月2日から10月いっぱいまで。

中島公園・すすきのの各所を巡るガイドツアー⇒ http://kamokamogawa-nostalgia.net/guide/




◇ひと休みの質疑応答


 Q 鴨々川の近く、100メートルぐらいのところに住んでいます。ある時、興味を持って札幌市に聞いてみたんだけど、河川登録上は鴨々川という川は無いという答えだったが・・・

 石川 鴨々川は豊平川の分岐点から創成川の始まるところまで2.5キロ。札幌は数千年前まで海で、南区は海牛の化石が出てきたりします。それがだんだん円山は湿地帯だったりして、だんだん大地が乾いていて。豊平川から鴨々川の支流が3本ぐらいありました。セイコーマートの裏の道も川だったんです。子供が流されるぐらいのけっこうな水量だった。物流の運搬のために創成川が作られて。鴨々川に注目しているのは、物流運搬で活躍したということもある。中島公園の菖蒲池、川から運搬してきた材木をためておく貯木場だった。川を知ることで、札幌がどうできあがっていくかを見ていける。

 Q ススキノも実際に芒原だった。20~30歳上の人に話聞くと、いろいろある。円山は維新の人達が入ってきて、京都を懐かしんでいたとか、碁盤の目にしたのもそうだとか。花街も。鴨々川も、京都の鴨川から来ていると聞いた。

 石川 京都の鴨々川説もあれば、アイヌ語という説もあります。碁盤の目、京都を模倣しているという話もありますね。

◇Bocketとは 

山田 Bocketはイベント紹介のムックですが、イベント紹介以外の記事もたくさん入っています。第2号、本当はきょう販売するつもりでいたのですが、叶わなかった・・・。第2号の特集は札幌、京都の歩き比べです。似ているのか。伏見や円山という地名もあります。それと鴨々染という染め物の話です。

 土井 取材の結果、札幌と京都は似ているんですか。

 石川 それ言うとネタバレかなと思ったんだけど、実はあまり似ていなかった・・・。

 山田 それはさておき、鴨々川も染め物をしていたんです。友禅染は、川で布を洗うという必要があった。札幌でも鴨々川で布地を洗っていたらしいというのを聞き、そこから染め物について調べてみよう!となった。札幌の歴史を、ファッションや服飾から着目するというのは無かったんじゃないかと思いました。京都で友禅染の話を聞いてきました。
そして表紙の写真。猫ちゃん。佐藤 準さんという札幌在住の写真家さんも巻き込んで。

 土井 聞いたことあるひとはいないかもしれません。元ススキノのキャバクラの黒服。40年以上、札幌の路上で写真を撮っているひと。ものすごくうまい。犬猫の目線で、誰もが知っているけれども、誰も見たことの無い札幌を撮る。鴨々堂でも鴨ノスの期間中は写真展をやります。

 石川 札幌、中心街の見方が変わるのではないか。


◇Bocket2号、特集はお坊さんの開拓史

 山田 続いてはお坊さん達の開拓を探るという特集です。ススキノのお寺の特集だった第1号の延長線上。明治期にお坊さんたちがどのような活躍をして、どのような闇があったのか。

 石川 鴨ノスに加わってくれている新善光寺さんも東本願寺さんも徳川お抱え、徳川寄りのお寺だった。そこから北海道の歴史がつながってくる。

 山田 アイヌの歴史も絡んでくる。東本願寺で見つかったのが錦絵。国道230号のもとになった道はお坊さんが開いたんです。


 石川 明治3年から4年の1年間で103キロ。伊達市から平岸天神まで。お坊さんたちが、道を切り開く様子をPRするために記録した錦絵19枚が出てきた。絵は好き勝手描ける。北海道博物館では夷酋列像展もありますが、和人に味方したというアイヌの人々の絵もある。アイヌ側から見ると問題作。

 山田 和人がアイヌを利用してきた歴史。話は少しずれますが、寿郎社からはアイヌの民話集もそういえば出ます(ウレシパ物語・9/12刊行)。


◇民話集

 
 土井 鴨ノスと直接関係ないんですが、日高、胆振地方のアイヌの民話を意訳した本が出ます。アイヌ民話は直訳すると難しい。でも、訳者の富樫利一さんはいわゆる和人なんですが、アイヌの民話を自分なりの言葉で現代語訳して子供に聞かせていて、子供の食いつきもすごいんです。研究者からは目の敵にされているけれども、エッセンスを伝えるには良い。話を戻すと、お坊さんたち、幕府側の東本願寺が北海道の開拓をしたかというと、明治政府にいい顔をするため。

 石川 幕末はお寺、檀家も大変だった。明治政府は自分達に寄ってこない人はじゃま。徳川寄りは目の敵にされていた。自分達の宗教を守るため。明治政府が「道作ってこい」って行ったら「はい行きます」と。

 山田 明治国家が国家神道の政策。お寺になるか神社になるか選べとかも。

 石川 札幌は豊川稲荷。駅前通りの鳥居。神社でもあるけど、お寺でもある。

 山田 京都の八坂神社も幕末まではお寺だった。明治政府の政策で神社を選んだ。

 土井 錦絵も我々はこんなふうに道を開きましたと世間に知らしめるための絵。アイヌの人たちもこんなふうにひざまずいて、ありがたがっているんですよと。今の時代はこのままでは公開できないと言って、ボケットでの公開も東本願寺のエクスキューズがたくさん付いています。

 石川 錦絵、浮世絵は情報展開するためのメディア。研究すると面白い。

 土井 Bocketには5枚載せている。24日発売。コンビニでも買えます。

 石川 錦絵は2、3、4日は東本願寺札幌別院でパネル展示します。


◇Bocket Map (ボケットマップ)


 山田 あとはボケットマップ。鴨々川流域の名所、観光地も紹介している。

 石川 お寺ばかり出ています。唯一お寺じゃないのは白虎隊の話。

 山田 白虎隊の生き残りの一人がススキノに住んでいた。

 石川 首切ったけど死にきれなかった人。飯沼貞吉鴨々堂のすぐそばに石碑あるので、それも触れています。ボケット3号とかでもっと掘り下げられれば。



鴨ノス公式ムック・Bocket⇒ http://kamokamogawa-nostalgia.net/bocket/
※市内書店・コンビニエンスストアのほか寿郎社でも通信販売しております。
 
鴨々堂⇒ http://kamokamo-do.com/
 

☆抄録 栗山麻衣(くりやま・まい、俳句集団【itak】幹事・銀化、群青)
 
 

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