2016年6月9日木曜日

俳句集団【itak】第25回句会評② (橋本喜夫)


俳句集団【itak】第25回句会評②

  2016年5月14日
 
橋本喜夫(雪華、銀化)
 
 

 徒歩五千カタクリの丘ピンクなり     長谷川静子

片栗の花が咲く丘を歩き回って楽しんだ作者の喜びが、徒歩五千という措辞に表れている。おしいかな ピンクなり が少し報告調 説明調にひびく。ここは平凡ではあるが
戻りけり とか 帰りくる とか でよかったのでは と思うが。


 漁り船出でて緑雨に降られけり     角田 萌

一見きもちのよい句なのであるがよく意味を考えると漁船が漁に出た沖で、または海原で緑雨に降られてぬれた ということなのだが、緑雨でいいのかな と思う。緑雨を夏に降る雨とすれば海原の色から 緑 が出てきてもいいかなとも思う。それと 船は出るもの
雨は降るもの であろう。言葉の冗漫も減点対象になる。 


 東風吹くと飛び出た鼻毛語ってる   村上海斗

大変おもしろいところをとらえているが これも 用言が多すぎる  吹く 飛ぶ 出る 語る 整理したいところだ。古典的で、情緒のある東風をすごい扱いをしていることは高く評価できるが。たとえば 東風吹かば飛び出てそよぐ鼻毛かな  くらいでも十分面白いのではないか。

 老犬の空色の眸に山ざくら        高畠町子 

中七までの措辞で老犬が空を見上げていることがわかり、それだけでなかなかの情景である。空の奥または空の下に山桜が咲き誇っている。空色の目だったものから 山桜にアングルが切り替わって、眸に山桜が映っているのかもしれぬ。

(つづく)


 

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