2017年1月30日月曜日

第29回俳句集団【itak】イベントを終えて


俳句集団【itak】第29回イベントを終えて 

講演会 寺山修司俳句の解剖学

 
語るほど逃げてゆく寺山修司

五十嵐秀彦
 

 
2017年最初のイベントに、私の「寺山修司俳句の解剖学」を持ってきました。

これまで文章では幾度となくこの作家のことを書いてきましたが、講演の形で語ったのは初めてのこと。
なぜなのか、準備をしていてその理由に気づきました。

寺山修司は多種多様なジャンルにわたる仕事を残し、その全てが相関していて、ひとつだけを取り上げるだけではこの作家の実像に近づけないのです。

特に今回の講演のメインのテーマは「句集『花粉航海』に隠された謎」であり、その謎を解くキーの多くがさまざまなジャンルでの表現に関係しており、限られた時間の中で伝えることは至難の技となるのでした。
なので、全てを語り切ろうという思いは捨てて、70分程度の中で寺山の魔力というものを少しでも感じてもらうことを目的としてお話をいたしました。

俳句とは一見関係のないカルメン・マキの「時には母のない子のように」、劇団「天井桟敷」、映画「田園に死す」、あるいは市街劇「ノック」のことなどを前半で話して、彼の表現の底にいつも流れていた「大衆性」「虚構」「偶然性」というものをチラリチラリとお見せし、その上で特に歌人・塚本邦雄、作家・三島由紀夫と寺山との対談の内容から、「過去を書き換える」こと「人生の偶然性への執着」を浮かび上がらせ、その上で句集『花粉航海』を見直したわけですが、はたして私の言いたかったことをうまくみなさんにお伝えできたかは自信がありません。

彼については、書けば書くほど何かを失うような気がするものです。そして今回は、語れば語るほど糸遊のように逃げていく寺山を実感しました。
 
 木の葉髪書けば書くほど失えり  寺山修司
 
 


講演抄録は近くブログにアップいたします。

そしてもうひとつ。

講演会に、あの酒場詩人・吉田類さんがぶらりと参加!!
サプライズを演出してくださった上、句会、懇親会にも全て参加してくれました。

句会での的確な句評や、懇親会での楽しい酒の話しなど、参加者全員が類さんのあたたかな人柄に惚れ直した様子でした。
【itak】に大きな応援をありがとうございました。


第29回イベントの参加者数は、第1部講演会57名、第2部句会48名、懇親会27名でした。
次回は、3月11日。
第1部企画は、北星学園大学名誉教授で英文学者の平倫子さんによる「ルイス・キャロル なくて七癖『シルヴィーとブルーノ・完結編』~翻訳こぼればなし~」です。
この「シルヴィーとブルーノ 完結篇」というルイス・キャロルの小説は、これまで日本語訳がなかった作品でしたが、昨年平さんが本邦初訳をなさいました。
その翻訳の中で感じたり考えたりしたことを語ってくださいます。
ご期待ください。


 

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